年金分割の問題
離婚時に、夫がサラリーマンで厚生年金に加入している場合、離婚に伴う年金分割を請求することが可能です。
ここでは一般的な知識として年金と、年金分割の制度をご紹介します。
自営業者や学生、専業主婦が加入する国民年金は、3つに分類されています。
1.第一号被保険者 ・・・ 自営業者、自由業、20歳以上の学生が該当
2.第二号被保険者 ・・・ 会社員(サラリーマン)が該当
3.第三号被保険者 ・・・ 会社員(サラリーマン)の妻が該当
上記の分類の中で、離婚時に最も大きな影響が出るのが3の「第三号被保険者」の人です。
つまり、夫は会社員で、妻が専業主婦だった、というパターンです。
会社員の妻でいる間は、妻自身は年金保険料を支払う必要はなかったのですが、離婚後に、もし妻がどこかの会社に勤めた場合は、妻自身が2の第二号被保険者になるため、給料から天引きされる形で年金保険料を支払うようになります。
また、離婚後に妻が会社に勤めない場合は、1の第一号被保険者という扱いになり、年金保険料を納めなくてはなりません。この場合は、第三号被保険者でなくなった日から14日以内に市区町村の役場で、種別変更届の手続きを行わなければなりません。
年金分割について
平成19年4月から、「年金分割制度」が開始されました。
また、平成20年4月以降は、新しい年金分割制度もスタートします。
平成19年スタートの制度を「離婚時分割」、平成20年スタートの制度を「3号分割」といいます。つまり「年金分割」には2種類あるのです。
少しややこしい話になりますが、みていきましょう。
平成19年4月1日以降に離婚をした場合、年金を分割する割合については、夫婦で合意をして手続きを取れば、離婚後も厚生年金を合意した割合で受け取れるようになります(離婚時分割)。
合意で決められる割合は最高で2分の1となっていて、夫婦の話し合いで割合を決められない場合は、家庭裁判所に対して分割割合を決める申し立てをすることができます。
離婚時分割の要件は・・・
1.平成19年4月1日以降の離婚が対象
2.分割対象となる期間は、平成19年4月1日以前を含む婚姻期間(事実婚は別規定あり)
3.妻が第一号、第二号、第三号被保険者であった期間に関わらず、分割が可能(妻が専業主婦でなくても請求できます。)
4.分割をすること、また分割の割合について、夫婦の合意が必要
5.夫婦の合意ができない場合は、裁判により割合を決める
6.夫からの分割請求も可能(妻の収入の方が多いような場合)
7.離婚から2年を経過すると、分割の請求ができない
また、平成20年4月以降は、専業主婦(第三号被保険者)であれば、夫婦の合意がなくても自動的に夫の厚生年金の2分の1を受給できるようになりました(3号分割)。
ただし、分割されるのは平成20年4月以降の婚姻期間の分だけなので、それ以前の分については夫婦の合意により分割割合を決めて年金事務所へ届け出る必要があります。
3号分割の要件は・・・
1.平成20年4月1日以降の離婚が対象
2.分割対象となる期間は、平成20年4月1日以降の妻が第三号被保険者であった期間全て
3.夫との合意は不要で、妻からの請求により自動的に分割される
4.夫の厚生年金の標準報酬を2分の1に減額し、減じた額を妻の標準報酬とする
5.請求の期限はない
6.夫が障害厚生年金を受給している時は、その年金額の基礎となる期間が、分割の対象となる期間と重なっている場合は分割できない
次に、よく勘違いされる事項をみていきましょう。
1.離婚して分割された年金は、離婚後すぐに受け取れるのか?
→ 受け取れません。妻自身が、年金を受け取れる年齢になってから受け取ることになります。もし妻自身が過去に保険料の未納期間があって、加入歴が25年に満たないような場合は、せっかく分割しても受け取れないことがあります。
2.国民年金も厚生年金も、両方分割されるのか?
→ 分割請求できるのは、厚生年金についてのみです。
3.夫が自営業で、国民年金しか納めてこなかった場合は?
→ 年金分割の対象となるのは厚生年金のみですから、まったく分割請求はできません。
4.離婚の原因が妻の浮気だった場合、妻の方から年金分割の請求はできるか?
→ この場合、離婚の原因そのものは妻にあるわけですが、だからといって年金分割の請求ができなくなることはありません。逆に、夫が浮気をして離婚になったからといって、「あなたの浮気が原因なんだから、ちゃんと年金分割してよ」と、無理に迫ることもできません。
5.離婚して年金分割もした後、別れた元夫が死亡、または再婚した場合はどうなる?
→ 分割した年金は、その時からずっと妻自身のものですから、分割後に元夫が死亡、再婚した場合でも妻が受け取る受給額は変わりません。
年金分割について、「私の場合はどうなるのか?」などの疑問、不安などありましたら、住所地の年金事務所へ聞くか、または社会保険労務士さんなどに相談してみましょう。